ポジティブ心理学について

ポジティブ心理学とは


「ポジティブ心理学」はアメリカ心理学会の元会長 マーティン・セリグマン博士 が1998年に提唱しました。

普通の人がより仕事のやりがいを感じ、より生きがいを感じ、本当に幸せに生きるための科学。それが「ポジティブ心理学」です。 幸福論、楽観と悲 観、困難の克服、強み、充実感と快楽、勇気と忍耐、その応用などを学問として研究しています。

今までの心理学は精神的障害や人間の弱さに焦点があてられ研究されてきました。ポジティブ心理学は人間がより良い生活やイキイキと仕事が出来るための研究 を進めているのです。

ポジティブ心理学の定義

2009年6月に行われた国際ポジティブ心理学会第1回世界会議でマーティン・セリグマンは「ポジティブ心理学とは?」というスライドでポジティブ心理学 を以下のように伝えています。

  • ポジティブ心理学は強みにも弱みにも関心を持つ
  • ポジティブ心理学は最高の人生をもたらすことにも最悪の状態を修復することにも関心を持つ
  • ポジティブ心理学は普通の人が満ち足りた人生を作ることにも、病気を治すことにも関わる
  • ポジティブ心理学はただ惨めさを減らすだけでなく、幸せや良い生活を増やすための介入方法を開発する。

ここでいうポジティブとは、世間でいうポジティブ思考とは違います。「行け行けドンドン」や「極楽とんぼ」のような向こう見ずな積極さとは違います。また、一時的な楽しみや快楽を求めることでもありません。ポジティブ心理学は生きがいや仕事のやりがい・充実感を得るために心理学に何が出来るか、を研究し ているのです。英語ではWell-Being(=幸福・健康)、Flourishing(=繁栄する、元気でいる、栄える、活躍する)、 Thriving(=生きがいにする・成長する・栄える・うまくやる・楽しむ)、Happiness(=しあわせ・喜び・満足)などの言葉が使われてお り、これらの実現に関する統計とデータによる実証をしていく科学なのです。

ポジティブ心理学の学者達

ポジティブ心理学はアメリカでは ムーブメント と言っています。大きな 「傘」 のような考え方で、その中にいくつもの理論があります。 以下が、おもなポジティブ心理学者と代表的な理論です。

  • 主なポジティ ブ心理学者:代表的な理論
  • マーティン・ E・P・セリグマン:楽観と悲観・レジリエンス(克服力)
  • ミハイ・チク セントミハイ:フロー理論
  • クリスト ファー・ピターソン:美徳と強み
  • エド・ディー ナー:主観的ウェルビーイング
  • バーバラ・ L・フレデリクソン:ポジティブ感情

ポジティブ心理学の応用

セリグマン博士が提唱してから10年、欧米ではビジネス界・教育界などでその成果が応用されてきました。いまや世界の潮流になりつつあります。日本はこれ からです。

IPPA第1回世界会議では多くの応用が発表されました。

世界ではビジネスへの応用が進んでいます。強み・ポジティブ感情・フロー理論などが応用されています。ポジティブ心理学を応用した組織作り、リーダーシッ プ教育、大掛かりな大組織の変革、小規模規模組織活性化や組織開発など多くの事例が発表されていました。

他に教育面でも活用が進んでいました。児童から大学にいたる教育・キャリア形成・不登校児童への適応・極貧地区への教育サポートなど幅広いポジティブ心理学応用事例の紹介がありました。

今後のポジティブ心理学の方向性

この世界会議で、マーティン・セリグマン博士は将来の方向性として、 「2051年までに51%の人がFlourish(元気でやりがいいっぱいの様子)になることを実現する」と発表しました。「未来を目指す科学」というの も新たに打ち出されたポジティブ心理学の方向性です。

主要なメンバーから、これからのポジティブ心理学は以下の分野を進めていくと発表されました。

  • マーティン・セリグマン
    1、ポジティブ心理学の教育と普及
    2、身体健康にポジティブ心理学の応用
    3、ポジティブ脳神経科学
  • クリス・ピーターソン(今回のIPPA世界会議主催者)
    1、更なる応用分野の開発、心理学以外の科学とも融合
    2、文化とポジティブ心理学応用の研究
    3、児童・生徒の教育ーレジリエンス
    4、研究成果の数の増加
  • アントニエラ・デレ・ファーブ (次期IPPA会長)
    1、西洋文化以外でのポジティブ心理学研究
    2、平和と人とのつながり
  • イロナ・ボニウェル (次期IPPA世界会議の主催者)
    1.ポジティブ心理学のさらなる探求
    2、人間のつながりー子供のレジリエンス
    3、複雑な人間ダイナミクスの研究
    4、ポジティブ心理学からポジティブ・サイエンスへ

働きがいがあり、充実感のある仕事ができ、一人ひとりが自分を活かせる世の中にしていきたい。これが出来るのがポジティブ心理学とその応用です。

なお、代表理事の渡辺 誠 (Max渡辺) は 「IPPA(国際ポジティブ心理学会)第1回世界会議」 に参加してきました。2009年 6月18日から22日に米国ペンシルバニア州フラデルフィアで行われました。上記のセリグマン、チクセントミハイをはじめ、ポジティブ心理学の主要学者が ほぼ全員顔を揃えました。参加者はポジティブ心理学を実務に応用する人が半数。そのほかに学者、研究者、学生、ビジネスマンなどが、世界中55カ国から 1500人の人が集まりました。