ポジティブ心理学:「よい情熱と害のある情熱」

以下、IPPAニュースからの抜粋記事です。

情熱について興味ある2つの視点から研究成果が対話形式で語られ ています。

お楽しみください。

翻訳:今給黎 辰郎

ロバート・バラーランド博士(以下バラーランド) はケベック州モントリオール大学の心理学教授で、 社会心理学者であり、IPPAの役員メンバーでもあります。 20年前、彼は、内発的-外発的動機づけについて研究をし、 内発的-外発的動機づけの階層モデルを開発しました。 彼は多くの研究論文を作成し、 世界中の様々なカンファレンスにおいて調査結果を発表しました。 最近では、“情熱”を研究対象としており、 この分野の第一人者でもあります。一般的に“情熱“ は多ければ多いほど良いと考えられがちですが、 バラーランドは人生の幸福度を増すためには”情熱“ の多さではなく、質が重要と説いています。

彼は “情熱”には2つのタイプ があるとしています。 過剰な情熱 (人がコントロールされてしまう情熱)適度な情熱 ( 人がコントロールできる情熱) です。 過剰な情熱が時に害を及ぼすのに対し、適度な情熱は、精神的、 肉体的に調和しており、人を活動的な方向に導きます。 バラーランドは過剰・適度の情熱を測るために『The Passion Scale』というものも開発しています。 詳しい質問項目は下記のWebサイトを参照下さい。

<URL>

www.psycho.uqam.ca/lrcs

最近の著書 Advances in Experimental Social Psychologyの中で 、バラーランドは“ Dualistic Model of Passion” (DMP)として、 パートナーに対する情熱がよりよい結果に結びつくということを述 べています。

 

スージー:情熱をどのように定義したのですか?

バラーランド:私たちは 情熱 を、 自分自身にとって価値あるもので、 時間とエネルギーを注いでいる活動に対する強い気持ちとして 定義 しています。

言い換えると、何かに情熱的になるということは、強く好み、 重要性を感じ、 自分によい影響を及ぼすと感じているような活動を定期的に行うと いうことです。例えば、 私がバスケットボールに情熱を持っているとしましょう。 私は私自身をもバスケットボールプレーヤーと思うようになります が、 私のアイデンティティとしてバスケットボールを私の一部の重要な ものとして、感じることということです。

スージー:あなたが提言している 適度と過剰の2つの情熱のタイプ について説明していただけますか?

バラーランド: 過剰な情熱を持った人は衝動をコントロールできま せん。自分自身が活動に携われずにはいられないのです。 その人はその情熱にコントロールされており、結果として、 活動中、活動後に、ネガティブな感情や認識、 行動をとるといった危険性が高くなります。

スージー:何か例を挙げてもらえないでしょうか?


バラーランド:例えば、 若い助教授がギターの演奏に過剰な情熱を持っていたとします。 彼は重要な研究助成金の承認を受けるプレゼンテーションをする前 日の夜は、 本来友人とのジャムセッションの誘いに参加するべきではありませ ん。しかし、 過剰な情熱に侵されている人はジャムセッションをしてしまうので す。ジャムセッションの間、 彼は仕事の代わりにギターを演奏している自分に腹を立てることで しょう。また、 そのことで彼はギターの演奏に集中することができず、 演奏を通じてポジティブな感情やフローな状態になることはないで しょう。このように、 過剰な情熱に支配されているとその活動をしていても欲求不満にな るし、ジャムセッションの誘いを断ったとしても、 演奏する機会を失ったことで思い悩みます。結局、 研究助成金の申請準備に集中できないで苦しむことになります。

スージー:興味深い例ですね。 適度な情熱 についても教えていただ けますか?

バラーランド:適度な情熱は、 意欲的に活動を行う力になるだけでなく、 健全な意志の醸成や自己承認につながります。 適度な情熱を持った人は、 やみくもにある活動に参加したい衝動に駆られることはなく、 柔軟性のある選択ができます。そのため、 情熱的な活動と他の活動との間に葛藤は生まれません。 情熱的な活動を止めざるをえないときも、 適度な情熱をもった人は、 やらなければいけないことに対して集中し、 きちんと対応することができるのです。 先ほどのギター演奏に情熱をもった助教授も、 適度な情熱をもっていれば、すぐに友人に延期の連絡をし、 研究助成金の申請の準備に集中することができるのです。

スージー: VIAストレングスと情熱的になる傾向には関連性がありますか?

バラーランド:DMPモデルは、 情熱は人と特定な活動間の関係性で引き起こされるとしています。 つまり、私はバスケットやギターでの作曲に情熱的である一方で、 水泳やピアノでの作曲には興味がないのに対し、 他の人は逆に水泳やピアノでの作曲に情熱的だが、 バスケットやギターでの作曲が興味ないということです。 また、 一般的な人の15-20%は情熱的でない、 つまり特定の活動に情熱を持っていません。 従って、 人の人生の全ての側面を情熱によって語ることはしません。。

スージー: それは、 特定の人生の領域において情熱的になれることはできるが、 他の領域については情熱的になれないこともあるということですか ?

バラーランド:もちろんです。 情熱とはその人の個性と特定の活動とに密接に関係しているのです 。ある人が、読書は好きだが、 スポーツや身体を動かすことに関心がもてないというようなことで す。

スージー: 情熱を身に付けることはできますか?

バラーランド:はい、できます。 情熱は遺伝によって伝わるものではありません。親や、先生、 コーチや他の人々が特定の活動を通じて情熱を教えていると考えま す。現に多くの人は、 それまでの人生の中で関わってきた誰かによってその活動が好まし いことと導かれたために、その職業を選択します。 それはつまり人から人によって情熱が伝えられるということです。

またパートナーに対する情熱は、自分自身だけでなく、 パートナーにも大きな影響を及ぼします。例えば、 過剰な情熱を持った人のパートナーは、 適度な情熱を持った人のパートナーよりも不幸と感じやすい傾向が あります。

スージー: なぜ人は情熱的でない人と、 そうでない人がいるのでしょうか? 情熱は先天的なものでしょうか、後天的なものでしょうか?

バラーランド:私は後天的なものと考えます。 人が何か活動へかかわる際に、親は大きな影響を与えます。 とはいえこの研究はまだ始まってから日が浅いため、 先天的な個性の違いが、 情熱度合いの違いにつながる可能性もないとはいえないでしょう。

スージー: 文化的な違いはどうお考えですか? ラテンや地中海地域、 南米の人々はより情熱的であるといったステレオタイプは本当なの でしょうか?

バラーランド:良い質問ですね。 例えば先のワールドカップ決勝戦の時に、 フランス系カナダ人と比べてイタリア系カナダ人はより熱狂的で、 過剰な情熱、適度な情熱を持った人が、 共に多いという傾向がありました。

スージー:情熱に関するあなたの一押しの研究成果は何ですか?


バラーランド:たくさんありますよ。まずは パフォーマンスに関することです。ハイパフォーマンスのためには2つの方法( 適度もしくは過剰な情熱)があるということです。つまり、 アスリートや企業家が過剰な情熱を持って行動したら、 高い目標を達成するでしょう。 適度な情熱をもったアスリートや企業家であっても同様に高い目標 を達成します。しかし、過剰な情熱を持つ人の周りには、 適度な情熱を持つ人の周りにはない衝突や感情的な苦悩があるでし ょう。

スージー: 情熱について最も重要なことは何でしょうか?

バラーランド:適度な情熱を持っていれば、 高いパフォーマンスをあげながら人生を幸せに過ごせるとでしょう か。

スージー:情熱に関して想定に反した研究結果はありましたか?

バラーランド:ありましたよ。例えば、 適度な情熱をもった人は、 与えられた活動についてネガティブフィードバックを受けるとパフ ォーマンスが低下するのに対して、 過剰な情熱を持った人はよい結果につながる 行動をするという傾向 があります。 逆に、ポジティブ なフィードバックは過剰な情熱を持つ人のパフォーマンスを低くし 、 適度な情熱を持った人のパフォーマンスを上げる傾向があります。 4つの研究からこの結果が導かれたため、 現在は心理学的な方面からこの研究に取り組んでいるところです。

スージー:これらの研究成果をもとに、 情熱的であることが人生に もたらす利点とは何でしょうか?

バラーランド:まずは、 情熱の2つのタイプがあるということを認識することです。 適度な 情熱を持つことは、 情熱がないことに比べて精神的に満足した人生につながります。 事 実、過剰な情熱を持つことは、情熱がない場合と同じように、 精神的に不満足な状況につながる場合が多いからです。

スージー:過度に情熱的になってしまうということはありますか?

バラーランド:情熱のタイプ次第です。 過度に適度な情熱を持つことはできませんが、 過度に過剰な情熱を持つことはできてしまいます。

スージー:情熱と対人関係の成功との関係性は何でしょうか?

バラーランド:パートナーに対して適度な情熱を持った人は、 過剰に情熱を持った人や情熱がない人よりも、 個人的にも両者の関係においても、よりよい関係を築いています。 情熱は人間関係に対して肯定的な意味合いを持ちますが、 それは適度な情熱を持っている場合においてのみです。 両者が互い に対して過剰な情熱を持った場合、 それは良くない関係性につながります。


スージー: どのようにして人生における情熱を増やしていくことが できるでしょうか。

バラーランド: 汝自身を知れ!です。 自身の強みや関心についてじっくり考えることです。 なぜなら、 情熱的な活動は結局のところ、自分自身の一部ですし、 それを通じて、 自分の興味やコンピテンシーがわかることになるのです。 自分自身や自分が関心あることについて知ることは、 仕事やレジャーといった自分の基本的な行動を選択することがより 容易になります。様々なものに触れる機会も増えれば、 情熱を持てるような選択肢を選ぶということもできるようになりま す。


スージー:他にも何か秘訣はありますか?

バラーランド: それまで持っていたものとは別の情熱的な活動をする時間を1週間 つくって下さい。そうすることで、 適度な情熱を持つことができます。実際、 複数の情熱的な活動に携わっていると、 特定の活動に固執することの方が難しいですからね。

Recommended Readings:

  • Carbonneau, R.J., & Vallerand, R.J. (2009). Do harmonious and obsessive passions towards the romantic partner make individuals change for the better? The mediating role of self-expansion and self-constriction . Paper to be presented at the Society for Personality and Social Psychology conference, Las Vegas, January 2010.
  • Fletcher, G.J.O., Simpson, J.A., & Thomas, G. (2000). The measurement of perceived relationship quality components: A confirmatory factor analytic approach. Personality and Social Psychology Bulletin, 26, 340-354.
  • Ratelle, C.F., Vallerand, R.J., & Mageau, G. A. (2009). A new look at passion and romantic relationships. Paper submitted for publication.
  • Vallerand, R.J. (in press). On passion for life activities: The Dualistic Model of Passion. Advances in Experimental Social Psychology.